コレクション

企画展「篠田桃紅 歌ごよみ」

万葉百首より 巻19/4139(大伴家持)
「万葉百首より 巻19/4139(大伴家持)」2000-03年 墨、唐紙

 

 既成の書のかたちにとらわれない墨による表現を目指し、戦後から現在まで一貫して墨による抽象絵画を制作し続ける篠田桃紅。桃紅の墨の世界には、深沈とした時間がしづかに流れ、和紙ににじみ拡がる墨の姿は、私たちに悠遠の古を思いおこさせます。書を究め、書家として活動をしますが、桃紅の表現意欲は次第に文字のもつかたちの約束事の中では収まりきらず、書という枠を取り去り、文字のかたちから離れ、自由な墨による造形表現へとすすんでいきました。
 しかし、書の世界をはなれたといっても、桃紅作品には書や文字が核をなし、女学校のころから嗜んだ和歌や歌のもつ日本独自の美の世界に溢れています。
 本展では、桃紅の筆による『万葉和歌百首』シリーズを紹介し、あわせて季節折々の風雅を楽しむ桃紅の墨による抽象作品を展示します。

展示作品数
34点(絵画12点、万葉百首より22点)
開催期間
平成22年4月6日(火)~6月24日(木)
休館日:第2,4土曜日、日曜日、祝祭日

篠田桃紅 (しのだとうこう)

作品一覧 (所蔵作品:100点)  ■略歴

<プロフィール>

篠田桃紅1913年、中国大連に生まれる。岐阜は本籍地。5歳の時、父の手ほどきで初めて墨と筆に触れ、以後独学で書を極める。第二次世界大戦後、文字を解体し、墨で抽象を描き始める。1956年渡米し、ニューヨークを拠点にボストン、シカゴ、パリ、シンシナティ他で個展を開催。58年に帰国して後は、壁画や壁書、レリーフといった建築に関わる仕事や、東京芝増上寺大本堂の襖絵などの大作の一方で、リトグラフや装丁、題字、随筆を手掛けるなど、活動は多岐にわたった。1960年代の激しい筆致はやがて叙情性をたたえ、80年代から90年代にかけては、線はより洗練された間を構成していった。
近年、面と線は寄り添い、朱はあくまで高貴に、墨は静かに鋭く、あるいは控えめに層をなしている。
2005年、ニューズウィーク(日本版)の「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた。また同年、5メートルを超える絵画を制作するなど、筆勢は留まることがない。