コレクション

水鏡「篠田桃紅 一片の花びら」

炎
「炎」2001年 墨、銀泥、和紙

2010年1月6日(水)〜2010年3月27日(土)

水鏡「篠田桃紅 一片の花びら」

沈静な墨の黒と果てしなく拡がる余白にそっと小さく添えられた朱、「落款」。小さいけれども作品を鮮やかに彩る朱は、桃紅作品の重要なアクセントとなっています。
幼少のころより書を手がける篠田桃紅にとって、落款を朱で印することは作品完成の標しでもあり、また最後に添えるものとして画面のバランスを決定付ける緊張感漂うものでした。墨による抽象表現にすすんだ現在でも、落款は署名としてだけではなく、墨いろを際立たせ、限られた色画面の中に彩を与えるうえにおいても、落款の朱は重要な役割を果たしています。
本展では、一片の花びらのように桃紅作品を彩る「落款」をテーマに、落款が効果的に使われている作品24点を展示し、四、五十種類ある落款と篠田桃紅の作品世界を紹介します。

珠紅
「水」
1998年 墨、和紙

銀赤黒
「緑」
1965年 墨、銀泥、緑青、金地、和紙、下地カンヴァス


篠田桃紅芸術月間 −2010− 水鏡

篠田桃紅は、1913年中国の大連に生まれ、日本の先駆的な抽象画家として世界的に高い評価を得ています。20才のころ書家としての仕事に疑問をいだき、自由な表現を求め、次第に書の領域を越え抽象画の世界へと移っていきました。
桃紅の筆から生れる洗練された一本の線と、深遠なる一点の墨は、見るものの胸に深く響きます。墨による抽象画という一方向からは捉えきれない、時折々のうつろいにゆれ動く心を映し出す桃紅の創作活動は、絵画にとどまらず、文字、かたち、ことばを越え、また建築に関わる仕事、リトグラフ、エッセイなどの世界においても、独自な光彩を放っています。
岐阜現代美術館、関市立篠田桃紅美術空間による共同企画第4回目となる今回の桃紅月間では、「篠田桃紅芸術月間−2010 水鏡」と題して、展覧会、コンサート、作品鑑賞会、ワークショップなどの関連イベントを開催いたします。
展覧会では、桃紅の表現活動の中で、絵画制作とともに重要な位置を占めるエッセイと、作品を彩る小さな朱、「落款」を取り上げます。絵画表現を原点とする桃紅のかたちにし得ない言葉や文、画面に表現された東洋的空間構成など、桃紅の姿を映し出すもうひとつのものとして、無限に広がる桃紅の世界を紹介します。

『桃花流水杳然として去る』 流水に浮かびはるかに去って行く桃の花のように、時の流れの中で、97歳を迎える桃紅の水墨の世界は悠揚として拡がり、くれない色に輝き続けています。

篆刻ワークショップ「落款をつくる」
2月20日(土)13:00〜16:00
会場:岐阜現代美術館
参加費:1,000円、事前申込必要(申込期間:1月20日〜2月12日)
池田昭子オーボエ・コンサート
2月27日(土)17:00開演
会場:岐阜現代美術館 NBKホール
※無料、事前申込必要(申込期間:2月5日〜19日)
 未就学児童・乳幼児につきましてはご入場をご遠慮ください。
石田泰尚ヴァイオリン・コンサート
3月20日(土)17:30開演
会場:岐阜現代美術館 NBKホール
※無料、事前申込必要(申込期間:2月26日〜3月12日)
 未就学児童・乳幼児につきましてはご入場をご遠慮ください。
児玉桃ピアノ・コンサート
3月27日(土)17:30開演
会場:岐阜現代美術館 NBKホール
※無料、事前申込必要(申込期間:3月5日〜19日)
 未就学児童・乳幼児につきましてはご入場をご遠慮ください。

篠田桃紅 (しのだとうこう)

作品一覧 (所蔵作品:100点)  ■略歴

<プロフィール>

篠田桃紅1913年、中国大連に生まれる。岐阜は本籍地。5歳の時、父の手ほどきで初めて墨と筆に触れ、以後独学で書を極める。第二次世界大戦後、文字を解体し、墨で抽象を描き始める。1956年渡米し、ニューヨークを拠点にボストン、シカゴ、パリ、シンシナティ他で個展を開催。58年に帰国して後は、壁画や壁書、レリーフといった建築に関わる仕事や、東京芝増上寺大本堂の襖絵などの大作の一方で、リトグラフや装丁、題字、随筆を手掛けるなど、活動は多岐にわたった。1960年代の激しい筆致はやがて叙情性をたたえ、80年代から90年代にかけては、線はより洗練された間を構成していった。
近年、面と線は寄り添い、朱はあくまで高貴に、墨は静かに鋭く、あるいは控えめに層をなしている。
2005年、ニューズウィーク(日本版)の「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた。また同年、5メートルを超える絵画を制作するなど、筆勢は留まることがない。