私は作品を写真から作っている。
写真は、出かけた先で目にとまった場所を撮る。
その撮りためた写真の中から作品に出来そうなものを選び、いらないものを取り去ったり、必要なところを強調するように加筆したり、コラージュしたりしている。
作品のもとになる風景を撮るとき、何を基準にその場所を選んでいるかは説明が難しい。
そのときの気分に任せているし、偶然に出会うことだからだ。
でも、何かしらの共通点はあるような気がする。
いつもと同じように過ごしていても、ふと心がざわつくようなときが誰にもあると思うけれど、そういった心地にさせるような場所や状況を集めているように思う。正直なところ、あまり良い気持ちではないとき。
心がざわついて、不穏な、何か予兆めいたものを感じる、そんな気分だ。
そういった不安や穏やかでない心地が、最も継続する強い感覚なのかもしれない。
写真を選んでいるときも、撮ったときの感覚がとても強く蘇ってくる。
綺麗だった風景は、印象が薄れて遠いことのような気がしてしまう。
穏やかではない気分は単純に美しくはないけれど、私にとってなんとなく誘引されるような、恐いけれど惹かれてしまう何かを隠し持っているような感じがする。
その感覚をとどめたくて描いているのだと思う。
作品を見られた方が、どのような印象を持たれるかは全くの自由で、私と同じように感じてほしいなどとは思えないけれど、もしこの感覚を共有できたなら嬉しいと思う。
桂川成美(かつらがわ・なるみ) 略歴