日本を代表する墨象作家・篠田桃紅。塗り重ねによって構築していく油彩とは異なり、水墨は、紙の上の一瞬の墨の流れを捉え、一筆ひと筆に神経を集中させる作業です。桃紅は、心にふと浮んだイメージを、切り詰められた一筆に託してかたちにします。
桃紅は1960年ごろからリトグラフを始めました。版画の手法の中でもリトグラフは、版の上に直接、紙に描くのと同様に筆を動かすことが出来、筆のそのままの表情を写しとります。桃紅は水墨同様、リトグラフにおいても、時々の心の一瞬を筆のおもむきに込めます。版の上の水の仕業によって意図しなかった思いがけない線との出会いを楽しみ制作したリトグラフは、1000点を超えます。
本展では、リトグラフ作品とあわせて新しく収蔵したエッチング作品を展示します。
行動展入選を重ねていた初期の油彩作品から、「碍子シリーズ」、「テンション・アート・シリーズ」までを中心にご紹介し、個性的な活動をし、独自の作品を提示しつづける後藤昭夫の1960年代までの歩みを辿ります。
同時開催「篠田桃紅 1960's―かたちの萌芽」