設計者インタビュー

NBK関工園へのアプローチ脇に打ち放しコンクリートの巨大な円筒が立っています。これは当初音楽を聴くためのホールとして1993年に竣工しました。その後、篠田桃紅さんの作品を主なコレクションとする美術館としての機能を付加して今日に至っています。

ホールへのメインアプローチは末広がりの坂道になり、そのまま中濃の山の陵線まで視野が伸びます。小さな穴のような入り口から中に入ると、暗がりのなかにホールの主フロアが左下に見え、それに向かって螺旋を成してゆったりと下ってゆきます。主フロアには美術品の展示のための巨大な衝立てが雪明かりのように光って並んでいるかもしれません。コンサートのある日には、衝立ては壁際に寄せられ、池の水面を背に演奏者が美しい調べを奏でているでしょう。池の先には開放的な造りのNBKの事務棟が見えます。事務棟は軽快で水平に伸びるのに対して、ホール棟は垂直的で重厚な風情をもって、二つは池を挟んで対話をしています。

大野秀敏(東京大学教授、建築家)
筆者は、事務棟ホール棟、展示用の衝立てなどの設計者でもある。

設計:大野秀敏

1949 岐阜市に生まれる
1972 東京大学工学部建築学科卒業
1975 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了、同年香山アトリエ勤務
1976-83 (株)槇総合計画事務所勤務
1983 東京大学助手(工学部建築学科)
1988 東京大学助教授(工学部建築学科)
1997 デルフト工科大学客員研究員
デルフト工科大学客員研究員
1999 東京大学教授(新領域創成科学研究科環境学専攻、工学部建築学科兼担)
2011 日本建築学会賞(作品)を受賞